過剰在庫を減らしてコストを削減する効果的な方法とは?

この記事をお読みの方は、なにかしら過剰在庫に悩みをお持ちだと思います。実際私どもも、なかなか過剰在庫が減らせなくて困っているという声を耳にすることが多いです。

しかし、そもそも在庫を適正化すると、どうしてコストを削減できるのでしょうか。

過剰在庫削減の流れや具体的にどういったコストを削減するべきかしっかり掴んでいないと、過剰在庫削減による経営の健全化はなかなかうまくいきません。

そこで当記事では、「過剰在庫の減少がコスト削減につながる理由」「過剰在庫で生まれるコストの種類」「過剰在庫を減らす効果的な方法」の3点について、詳しく解説します。

過剰在庫を減らしてコストも削減したいとお考えの経営者様は、ぜひ最後までお読みください。

過剰在庫の減少がコスト削減につながる理由

過剰在庫の減少がコスト削減につながる理由

まずは「過剰在庫の減少がコスト削減につながる理由」について、しっかりとおさらいしてしまいましょう。

過剰在庫の減少がコスト削減につながる理由は、大きく以下の3点です。

  • 資金繰りが楽になるから
  • 在庫管理コストが適正になるから
  • 劣化・型落ちなどのリスクが減るから

それではひとつずつ解説していきます。

資金繰りが楽になるから

過剰在庫を解消すると、単純に資金繰りが楽になります。

まず意識したいのは、「在庫=お金」という事実です。商品を仕入れるには、仕入代金と後述する在庫管理コストが発生します。

そう考えると過剰在庫は、仕入代金の回収ができない・本来得るはずの利益が入らない・在庫管理コストがかかるという、トリプルパンチを受けている状態です。まさに「資金の停滞」以外の何物でもありません。

こういう状態が長期間続くと、商品という名目上の財産が増えているのに現金が足りない状態となり、最悪の場合「黒字倒産」の可能性も出てきます

ということで、なるべく早く過剰在庫を解消して、会社のキャッシュフロー(お金の流れ)がスムーズに回るようにしなければなりません。

在庫管理コストが適正になるから

在庫が多量にあると、人件費・輸送費・セキュリティコストなど、さまざまな在庫管理コストが発生します。

現在の保管場所で足りなくなれば、新たに倉庫を建設するようになるでしょう。常駐の管理員も必要になるかもしれません。品質維持のために常時空調をフル稼働させると、光熱費の負担も決して小さくないでしょう。

また店舗ごとに在庫を管理するケースでは、保管量にも限界があり、貴重な売り場面積を侵害することもありえます。

過剰在庫を適正量に減少できれば、こういったムダなコストが一切必要なくなるのです。

劣化・型落ちなどのリスクが減るから

一般的に商品は、長期間保管すると品質が劣化します。劣化しにくい商品でも、型落ちや陳腐化(類似商品が普及して価値が下がる)によって、どちらにしても商品価値の下落を回避するのは不可能です。

一度劣化や型落ちした商品は、通常の価格では販売できません。そういうわけで、これまでは値引きセールや、大幅な値引きをして買取業者に引き取ってもらっていたのです。

また極端に品質の劣化したものや再販ができないもの(手帳やカレンダーなど)は、値引き販売でも引き取りが期待できないため、破棄することになるでしょう。

破棄となれば、値引きどころか、逆に産廃処分費用を払わなくてなりません。過剰在庫がなくなれば、こういったムダな経費もすべて解消されます。

過剰在庫で生まれるコストとは

過剰在庫で生まれるコストとは

前の章では、過剰在庫の減少がコスト削減につながる理由を解説しました。しかし過剰在庫によるコストが具体的にどんなものか、きちんと理解している人は案外少ないものです。

ここでは過剰在庫で生まれる主なコストを、7つ解説していきます。

  • 仕入代金
  • 借り入れの返済金利
  • 在庫保管費用
  • 管理コスト
  • 消耗・減価償却
  • 返品・売却費用
  • 商品に対する保険料

それではひとつずつみていきましょう。

仕入代金

商品を仕入れれば、当然代金を支払わなければなりません。現金であれば即金で、掛け取り引きの場合は2〜3カ月以内に支払うのが一般的です。

しかし過剰在庫とは、すなわち商品が売れない状況ですから、売れるまではいつまでも仕入代金の回収ができません。そうなればキャッシュフローの悪化を招き、最悪黒字倒産の可能性があるというのは、さきほど説明した通りです。

借り入れの返済金利

もし仕入れや保管用倉庫の建築費用などに対して借入金があれば、当然毎月の返済と合わせて「返済金利」が発生します。

かりに1,000万円を金利3%で180日借りたとしましょう。そうすると、金利を約15万円も支払わなくてはなりません。企業である以上、ある程度の借入金はやむを得ませんが、借入期間と金利にかんして一度金融機関と交渉してみる価値はあるでしょう。

たとえば借りやすいこともあり、返済期間1年以内の手形借入れを利用する機会は多いはずです。もしこれを、返済期間3〜5年の中期返済借入れに変更できれば、金利返済負担を大きく軽減できます。

金融機関は返済がストップするのを、なによりも恐れているものです。きちんとした返済計画さえあれば、条件変更に応じてくれる可能性は決してゼロではありません。

在庫保管費用

商品を保管するには、自社倉庫と外部倉庫(リースor新築)の2通りが考えられます。外部倉庫をリースする場合、保管料は下記のいずれかを選んで契約するのが一般的です。

  • 商品の個数 × 保管料単価
  • 商品の重量 × 保管料単価
  • 坪数 × 保管料単価

現在のところ、外部倉庫のリース方法としては、商品の個数を基準にする方式がもっとも利用されています。

また上記保管料だけでなく、入出庫時の荷受料も必要です。さらに単なる保管場所ではなく、梱包や発送も含めたアウトソーシング契約になると、便利な半面、コストはさらに高くなります

消耗・減価償却

ここでいう消耗・減価償却は、経費計上できるプラスの意味ではありません。長期保存をすれば、その分単純に消耗もしくは減価償却されますので、資産価値が減少するマイナスのコストだと考えてください。

商品に著しい破損や劣化がみられ、通常の販売ができない場合は、決算時に「棚卸資産の評価損」として会計処理します。そのままにしておくと「在庫=資産」とみなされ、税金が高くなるからです。また著しく陳腐化(流行遅れなど)が起きた場合も、同様に評価損として計上できます。

いずれの場合も、破損の写真や陳腐化がわかる新製品のカタログ・中古品の相場表など、損失の証明できる書類を忘れずに用意してください。

返品・売却費用

衣類や書籍のように、ある一定期間売れなかった商品をメーカーに返品するシステムを採用している場合があります。

売れない商品をメーカーに返品できれば、過剰在庫にかんするロスが減るのは事実です。しかし契約にもよりますが、今度は返品処理をする人件費や運送費が発生します。

いくら返品するとはいえ、数量確認や再梱包などは必要ですから、人員不足に悩む現場サイドにすれば決して少なくない負担です。

また販売した商品になんらかの不具合があり、返品されてくるケースも考えられます。故障や破損など販売側に責任があるケースでは、当然送料は自社負担です。

返品された不良品を、とりあえず保管しておくスペースも必要になります。不良品は再販できませんから、当然破棄となり、前述のように産廃処分料を支払わなければなりません。

商品に対する保険料

商品を1カ所で保管している場合は、火災や水害・盗難などの理由で、商品がダメになってしまう危険性は高まります。かりに上記の災害にあえば被害額は甚大です。したがってほとんどの企業は、在庫商品に対してなんらかの保険をかけるようになるでしょう。

保険の種類は火災保険をはじめ、盗難保険・店舗総合保険など、選択肢はたくさんあります。もし「製造・運送・販売」を一律で手掛けているならば、「動産総合保険」もオススメです。

火災保険と違い運送中の事故や破損に対しても保障が受けられますし、高額商品には別途特約で、1事故につき100万円までの保障が可能です(東京海上日動の場合)

参考:東京海上日動「財産に関する補償」

過剰在庫を減らす効果的な方法とは

過剰在庫を減らす効果的な方法とは

減らすべき過剰在庫のコストが明確になったところで、この章では過剰在庫を減らす効果的な方法について解説していきます。

今回ご紹介する、過剰在庫を減らす効果的な方法は以下の2点です。

  • 発注計画の見直し
  • 在庫管理のルール化

詳しく解説します。

発注計画の見直し

過剰在庫を減らすためにもっとも効果的なのは、なんといっても発注計画の見直しです。

発注計画に対する専門的な考察をここではしませんが、基本的に「必要のない在庫は持たない」と意識するだけで、過剰在庫はかなり減少します。

それでは今必要な在庫はどうやって求めればよいのでしょうか。まず以下の3点を中心に、過去のデータを分析しましょう。

  • 平均出荷量
  • リードタイム
  • 安全在庫

平均出荷量を年・月・週・曜日などにわけて、チェックしてください。これまでにどのくらい出荷してきたのかを把握することが、過剰在庫解消の第一歩です。

また欠品や余剰を防ぐためには、発注から納品までにかかるリードタイムも、きちんと把握しておく必要があります。もちろん、欠品にならない最低限の在庫量を示す「安全在庫」の設定もきちんとおこなってください。

こういったデータが明らかになれば、あとは天候や社会情勢・トレンドなどを加味して、発注数を調整するだけです。

在庫管理のルール化

在庫管理のルール化も、過剰在庫削減には欠かせません。在庫管理といっても、「在庫データ管理」と「在庫品管理」の2種類にわけて考える必要があります。

まず在庫データ管理ですが、在庫管理システムを導入すれば管理の手間を大幅に削減できますし、なんといっても情報を全社員で共有できるのが大きなメリットでしょう。

ただしシステムを使いこなすには、ある程度のPCやソフトに対する知識が不可欠です。責任者を筆頭に、システムとデータの使い方をきちんとマスターすることが求められます。

また在庫管理の改善というと、どうしてもシステムの導入に目を向けがちですが、それよりも重要なのは「現場の改善」ではないでしょうか。

在庫管理の基本は、「3S」です。3Sとは、「整理・整頓・清掃」の頭文字を取ったもので、在庫管理に限らず、多くの会社が仕事の指標として取り入れています。

3Sを徹底すれば、不要な商品を処分でき、正規在庫品を設置するスペースが生まれます。種類ごとに置き場所を決めて、誰でもすぐに取り出しができるようにしましょう。

まとめ

過剰在庫にかかるコストを削減する必要があるとわかっていても、まず具体的にどのようなコストがかかっているのか、案外知らない人が多いものです。

そこで当記事の前半部では、「過剰在庫の減少がコスト削減につながる理由」と、「過剰在庫で生まれるコストの種類」について詳しく解説しました。

後半部では、「過剰在庫を減らす効果的な方法」についても、しっかりとご紹介しましたので、あとは実際に一歩を踏み出すだけです。やれることはすべておこない、なるべく早く過剰在庫を解消しましょう。

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