「過剰在庫のデメリット」過剰在庫を解消する5つの方法とは?

なにか商品を販売する企業であれば、どこでもある程度の在庫は常時確保してあるはずです。しかし、あまりにも在庫が多すぎると、経営悪化の大きな原因にもなりかねません。

もちろんほとんどの企業では、「できるだけ早く過剰在庫を解消したい」と考えてはいます。しかし、その効果的な解消方法がわからずに困っているというのが現実ではないでしょうか。

そこで今回は、過剰在庫でお困りの企業様のために、「過剰在庫が経営に与える影響」と「過剰在庫を解消する5つの方法」について詳しく解説していきます。

最後まで読んでいただくと、過剰在庫解消の大きなヒントを発見していただけるでしょう。参考にしていただければ、さいわいです。

過剰在庫が経営に与える影響とは

過剰在庫が経営に与える影響とは

冒頭で「どの企業も大なり小なり在庫は必ず抱えており、さらに在庫が過剰になると経営に悪影響をおよぼす」とお話ししました。

しかし考えてみると、どうして在庫がたくさんあると問題なのでしょうか。在庫がたくさんあればお客様に迷惑をかけることもありませんし、いずれ売れるのあれば、別にそれほど悪影響はないような気もします。

しかしながら、やはり過剰在庫には、企業の経営を圧迫するさまざまなデメリットが存在するのです。

この章では、まず「そもそも在庫が必要な理由」と「過剰在庫のデメリット」について、しっかりと解説していきます。

そもそもどうして在庫が必要なのか

そもそも、どうして在庫は必要なのでしょうか?

それは「機会損失を極力出さないため」です。

たとえば製造業の場合、部品が足りなくなれば工程がストップしてしまい、納期へ間に合わない可能性が出てきます。謝罪で済めばよいですが、最悪の場合は賠償金が発生することも考えておかなくてはなりません。

また、作業中断時にもかかわらず発生する固定費(従業員の賃金や会社の運営費など)も、まったくのムダになってしまいます。

小売業であれば、当たり前ですが、在庫がないと商品を販売できません。このように商品を扱う商売であれば、必ず在庫は必要なのです。

過剰在庫のデメリット

過剰在庫がよくないというのは誰もが理解しています。ところが、過剰在庫の具体的なデメリットをきちんと把握している人は、案外少ないものです。

過剰在庫の主なデメリットは以下の4点です。

  • キャッシュフローが悪化
  • 在庫管理コストが発生
  • 劣化・型落ちなど市場価値が低下
  • 期末まで経費計上できない

ひとつずつ詳しく解説します。

キャッシュフローが悪化

現金(手形取引の場合もありますが)で仕入れ(あるいは商品を製造)たものを販売して利益を得る、これが商売の基本になります。

ただし仕入れとは、いわば、流動性の高い現金を流動性の低い商品に変換する行為です。商売のしくみを考えれば仕方のないことですが、本来は在庫など持たず、仕入れて即販売するのがベストでしょう。

売れなければ現金にならない商品を長期間抱えておくことは、会社から現金資産が長期間失われることにほかなりません。

したがって過剰在庫が長期間続くと、受注量は順調なのにキャッシュが足りなくなり、黒字倒産を起こす危険性もあるわけです。

在庫管理コストが発生

多量の在庫を管理するには、保管場所・人件費・光熱費・輸送費などが余計に発生します。在庫量によっては、現在の保管場所では狭く、あらたに広い倉庫が必要になるかもしれません。

もしも外部の倉庫をリースするならば、現金を生まない商品のために多額のリース料を払い続けることになります。また入出庫や棚卸しの人件費も余計にかかるでしょう。商品によっては、品質を維持するために空調費も発生するはずです。

このように過剰在庫があると、管理コストが増大し、余計にキャッシュフローを圧迫します。

劣化・型落ちなど市場価値が低下

商品にもよりますが、長期間在庫すると商品は劣化します。保管状態によっては、型崩れしたり、カビが発生したりするリスクもゼロではありません。

季節モノは、とくに長期在庫が発生しやすい商品です。洋服・エアコン・暖房器具・スポーツ関連・季節限定商品は、そのシーズンを逃すと少なくとも1年間は適正価格での販売は困難になります。

また過剰在庫が長引くと、型遅れなどが生まれ、商品の価値が著しく低下します。こうなるとこれまでは、値引きして安く販売するしか方法がありませんでした。この在庫解消の方法については、のちほど詳しく解説します。

期末まで経費計上できない

経理上、在庫品は「棚卸資産」です。したがって、決算時期に在庫品が多量に残っていると、会社の利益として計算されてしまいます。実際には、売るに売れず現金化できなくて困っているにもかかわらずです……

資産が増えれば、当然税額も高くなります。そこで企業は決算までに、在庫をなんらかの方法で処理しようとするわけです。

しかしこれでは、決算時期までは正確な会社の業績が確定しないということになってしまいます。これは経営の方向性を決める上で、あまりよい状態とはいえません。

ちなみに企業はこれまで、以下のような処理をして税金を抑えてきました。

  • 値引き販売 → 通常の売上処理(赤字)
  • 廃棄処分 → 「廃棄損」計上

廃棄も値引き販売もできない場合は、経理上「評価損」を計上して資産を減らします。ただし、廃棄損と評価損は、税金逃れの疑いがあるため税務署もかなり厳しくチェックします。

そういった煩わしさを避けるという意味では、後述する「事業者間オークション販売」は非常にオススメです。

過剰在庫を解消する5つの方法

過剰在庫を解消する5つの方法

ここまでは過剰在庫が与える悪影響について解説してきましたが、この章では過剰在庫の解消方法を5つ紹介していきます。

  1. 買取業者へ値引き販売
  2. 一般向け値引きセール 
  3. 廃棄
  4. 事業者への相対一括売却(大幅値引き)
  5. 事業者間オークション販売

それではひとつずつ見ていきましょう。

まずはきちんとした在庫管理から

具体的な在庫の解消方法を解説する前に、ひとつだけ頭に入れておくべきことがあります。それは、「在庫管理」をしっかりとおこなう体制をつくることです。

管理責任者のもと在庫をきちんと保管して、商品の動きをきちんと記録する。これらができていないのに、今ある過剰在庫を処分しても、結局はまた過剰在庫が増えていくだけです。

在庫処分の大前提として、きちんとした在庫管理が不可欠であることをぜひ覚えておいてください。

1.買取業者へ値引き販売

最初にご紹介するのは、過剰在庫を買取業者へ値引き販売する方法です。なんといっても一括で買い取ってもらえるので、余計な在庫が残ることもありませんし手間もかかりません。

とはいえ、もちろんデメリットもあります。まず商品ジャンルによっては、一括買取りをしてもらえないケースもあるようです。その場合、多少手間はかかりますが、複数の買取り業者に依頼するようになるでしょう。

また買取業者に売却した場合は、引き取ってもらった商品がどこで販売されるかわかりません。バーゲン品に使われたりすると、ブランドイメージが悪化することも考えられます。商品によっては、慎重に検討する必要があるでしょう。

2.一般向け値引きセール

在庫処分で真っ先に浮かぶのが、この「値引きセール」ではないでしょうか。「在庫一掃セール」「決算大処分市」のように、どの店でも当たり前のようにおこなわれています。

もちろん値下げしているだけ利益は減りますが、その分普段よりたくさん売れますので、集客方法のひとつとして定期的に活用している企業も少なくないようです。

ただし値引きセールをおこなうと、取り扱い商品によってはブランドイメージが崩れることも考えられます。その場合は、福利厚生の一環として、社員に格安で販売するのもひとつの方法です。

3.廃棄

これまで説明してきたとおり、決算時に在庫が多量にあれば、その分資産とみなされて税金が高くなります。そこで実際に在庫を廃棄して損失計上すれば、その分利益が減って税金も下がるわけです。

さきほど、廃棄損と評価損は税金逃れがしやすいため、税務署もかなり厳しくチェックすると説明しました。しかし廃棄は、書類上だけでなく実際に在庫を廃棄しています。以下に挙げた書類さえきちんと保管しておけば、まず大きなトラブルにはならないでしょう。

  • 廃棄決定の社内稟議書など
  • 在庫品の仕入れ情報・リスト
  • 在庫品の写真
  • 産廃業者の請求書・領収書
  • 産廃のマニフェスト

書類の不備があると、廃棄損処理が認められない可能性もあるので、必要な書類は必ず準備しておきましょう。

4.事業者への相対一括売却(大幅値引き)

過剰在庫の解消方法として、「事業者への相対一括売却」という方法が広く利用されています。複数の業者ではなく1社とだけ取引するので、面倒なやりとりを何度もおこなう必要がありません。

一挙に過剰在庫が処理できれば、保管場所の管理コストも削減できますから、「決算までに処分」という条件下では非常にありがたい存在です。

ただしその分、競合がいませんから、買取価格はどうしても低くなります。 買取事業者にしてみれば、売れ筋ではない商品も含めてまとめて引き取るわけですから、これはやむを得ないことです。

おそらく今後も、急ぎの場合は「相対一括売却」、時間的にゆとりのある時は次に紹介する「事業者間オークション販売」というように、うまく使い分けていくようになるでしょう。

5.事業者間オークション販売

事業者間オークション販売といわれても、いまいちピンとこない方も多いかもしれません。現在、事業者間オークション販売が一番盛んにおこなわれているのは、自動車業界でしょう。

店舗に陳列してある自動車も、今やほぼ100%事業者間オークションで競り落としてきたものばかりです。お客様の希望する車種が在庫にない場合も、オークションで探してきます。

オークションは「競り方式」が基本なので、値引きセールや相対一括売却に比べて、適正価格での取引が期待できます。ただこれまでは、自動車のようなごく限られた業界だけでオークションがおこなわれてきました。

しかし現在では、さらに幅広い商品を対象とした事業者間オークション販売も、利用できるようになっています。小口入札可・販売制限可・未払いリスクなしなど、たくさんのメリットのある「事業者間オークションは、今非常にオススメの方法です。

まとめ

今回は、過剰在庫が与える悪影響と、その解消方法について詳しく解説してきました。

過剰在庫が多すぎると、会社のキャッシュフローを大きく悪化させます。できるだけ早く解消しましょう。さらに、過剰在庫が発生しないように、適正な在庫管理を心がけてください。

今回紹介した在庫処分の方法のなかでも、「売却価格が安い」「自社ブランド崩壊の危険性」といったデメリットを解消した「事業者間オークション」は、とくにオススメです。

ぜひ、自社に合った方法を研究してみてください。